オーストラリアの熱帯地域やニューギニア島に生息する「エリマキトカゲ」。映画やCMでその独特な姿を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
エリマキトカゲは、オーストラリアやニューギニアに生息する自然豊かな爬虫類で、ペットとしても注目が高まっています。
この記事では、エリマキトカゲの基本情報から生態、フリルの役割、さらには分布や飼育環境のポイントまで詳しく解説します。
エリマキトカゲってどんな生き物?
エリマキトカゲ(学名:Chlamydosaurus kingii)は、アガマ科に属する中型のトカゲで、何といっても首元に広がる大きなフリル(襟飾り)が最大の特徴です。
このフリルは威嚇や求愛の際に大きくなり、まるで小さな恐竜のような迫力を生み出します。普段は首元にたたまれていて目立ちませんが、必要に応じて一気に広がり、外敵を驚かせたり、自分の存在をアピールしたりします。
原産地はオーストラリア北部とニューギニア南部で、英語では”Frilled Dragon”の愛称でも知られています。全長は90cm前後に達する個体もおり、特にオスはメスよりも大型で、フリルも発達します。
コミカルともいえる二足歩行や、木登りに長けた樹上性の生態などから、ほとんどの時間を木の上で過ごします。テレビや映画でもたびたび登場し、日本国内でも知名度が高まっています。
エリマキトカゲの体の特徴
エリマキトカゲは、体長が最大で約90cm、体重は600gほどまで成長します。頭は幅広く、長い首には特徴的な「フリル(えりまき)」を収納しています。脚は長く、尾は全体の2/3を占めるほど細長くなっています。
オスはメスよりも体が大きく、フリルや頭、あごも発達しています。鼻の穴は丸く、下向きで左右反対方向を向いています。
体の鱗(うろこ)には筋のような突起があり、小さい鱗と大きい鱗が交互に並んでいます。特に目を引くのが、頭から首にかけてついているフリルです。
普段はたたんで首に巻きつけていますが、威嚇するときなどに大きく広げて円盤状になります。広がると約30cmにもなり、体の4倍以上にも見えることがあります。
このフリルは骨や筋肉で動かされ、主に外敵を驚かせたり、他の個体とのやり取りに使われます。また、たたんでいるときは体の輪郭をぼかしてカモフラージュにも役立ちます。
フリルの色は地域によって違い、西の方では赤、中央はオレンジ、東では黄色や白、ニューギニアでは黄色が一般的です。
色の違いは体内の色素によるもので、特に赤やオレンジのフリルを持つ個体は、多くの色素を含んでいます。なお、体色と性格(闘争心)の関係も研究されましたが、はっきりとした結果は得られていません。
出典:Wikipedia
行動パターンと二足歩行の秘密
エリマキトカゲは昼間に活動するトカゲで、ふだんは木の上で生活しています。地上に降りるのは、エサを探したり、場所を移動するときなどです。
とくにオスは広い縄張りを持っていて、1日に60〜70メートルほど移動することもあります。また、オスは自分の縄張りをアピールするときに、首のまわりの大きなフリルを広げることがあります。
雨の多い季節(雨季)には活動が活発になり、低い木や地面の近くにもよく姿を見せます。一方で、乾いた季節(乾季)になると、あまり動かず、高い木の上にとどまるようになります。
休眠(冬眠のような状態)には入りませんが、食べものや水が少なくなるため、エネルギーを節約するために動きがゆっくりになり、体の代謝もぐっと下がります。
朝や夕方には、木の幹に垂直に立つような姿勢で日光浴をすることがあります。ただし乾季になると日光浴をやめて、体温をあまり上げないようにして、水分やエネルギーを守ろうとします。昼間に暑くなってくると、日陰を求めて木の上の方へ移動することもあります。
山火事などが起きたときには、大きな木やシロアリの巣(蟻塚)などを安全な避難場所として使います。火事のあとには、木の枝がよくつながっている場所を選んで移動します。
そして、エリマキトカゲの最大の特徴ともいえるのが「二足歩行」です。びっくりしたときや敵から逃げるときには、後ろ足だけで立ち上がって走ることができます。
そのときは、体のバランスを取るために頭を後ろにぐっと傾け、しっぽと一直線になるようにして走ります。このユニークな走り方は、とてもめずらしく、見た人に強い印象を与えます。
飼育環境の整え方
エリマキトカゲを飼育する際に最も重要なのは、自然環境をできるだけ忠実に再現することです。特に樹上性の生活様式に配慮したケージ設計が求められます。
理想的な飼育ケージは、最低でも高さ90cm以上、横幅・奥行きともに60cm以上、できれば120×60×120cm程度の大型ケージが望ましいでしょう。
内部には登りやすい流木や太めの枝を複数配置し、床材にはヤシガラや樹皮チップを使って湿度を維持します。
照明は紫外線ライト(UVB)とバスキングライト(スポットライト)を併用し、日中はバスキングスポットで35℃前後、全体で28〜32℃、夜間は22〜25℃程度に保ちます。湿度は50〜70%を目安とし、1日数回の霧吹きで調整しましょう。
ストレスを与えないことも大切です。無理な接触はフリルの展開を引き起こし、エネルギーの消耗や警戒心の増加に繋がります。観察を中心とした距離感を保ち、トカゲが自分のペースで環境に慣れるようにしましょう。
ケージ内には必ず隠れ家を設けましょう。臆病な性格のエリマキトカゲにとって、安心できる場所の存在はストレス軽減に不可欠です。
温度・湿度計を常備し、日々の環境変化を記録することで、健康トラブルの早期発見が可能になります。
食性と給餌
エリマキトカゲは主に昆虫や小さな無脊椎動物を食べる動物食性のトカゲです。野生ではシロアリやアリ、ムカデ、クモ、バッタなどを捕まえて食べ、特に乾季にはシロアリ、雨季にはガの幼虫などが重要な食料になります。
アリの摂取量は季節や山火事の影響を受けることもあります。木の上から獲物を探し、見つけると地上に降りて二足歩行で走り、四足歩行に切り替えて捕まえた後は再び木に戻ります。
飼育下では、フタホシコオロギやデュビアローチ、ミルワーム、シルクワームなどの昆虫を与えるのが基本です。これらにはカルシウムパウダーとビタミンD3を添加することが大切で、特に紫外線が不足しがちな環境ではビタミンD3の補給が欠かせません。
成長期(体長40cm以下)の個体には毎日少量ずつ、成体には週2〜3回の頻度で与えると健康を保てます。また、冬季や気温が低下したときには活動量や食欲が落ちることがありますが、無理に食べさせるのではなく、飼育環境の見直しを優先しましょう。
水分補給は霧吹きで葉や壁面に水滴をつけて飲水を促すほか、新鮮な水を入れた水容器を常に設置しておくと安心です。
まとめ
エリマキトカゲは、大きなフリルを広げる独特な姿や、コミカルに走る二足歩行など、見ていて飽きない魅力的な爬虫類です。
そのユニークな見た目と性格から、世界中で多くの人に親しまれています。一見すると飼育が難しそうに感じるかもしれませんが、基本的な知識としっかりとした飼育環境を整えれば、初心者でも十分に飼うことができます。
エリマキトカゲは比較的おとなしく、ストレスが少ない環境であれば人にも慣れてくれることがあります。そうした姿を間近で観察できるのも飼育の大きな楽しみのひとつです。
毎日の変化を見守りながら、エリマキトカゲのゆったりとした時間を楽しんでみてはいかがでしょうか?最後までお読みいただきありがとうございました☺