ニホントカゲの冬越し完全マニュアル|冬眠させる?させない?

冬になると、庭や公園で見かけていたニホントカゲの姿が突然見えなくなった――そんな経験はありませんか?

実は、寒さから身を守るための「冬眠」に入っている可能性があります。

飼育しているニホントカゲも冬眠させるべきなのか迷う方も多いかもしれません。自然のリズムに合わせて冬眠させる方法もあれば、室内で保温して冬を越す方法もあります。

どちらを選ぶかは、飼育環境やトカゲの体調によって変わります。

この記事では、ニホントカゲが野生でどのように冬を過ごすのかを解説し、飼育下で「冬眠させる」「させない」それぞれの判断ポイントや環境づくりのコツを紹介します!

ニホントカゲは冬眠する生き物?

ニホントカゲは、気温が下がる冬になると姿を見かけなくなります。これは体調不良ではなく、自然な生態によるもの。

ニホントカゲは「変温動物」と呼ばれ、外の温度に体温が左右されるため、寒い季節は動きを止めて冬眠に入ります。ここではその仕組みを見ていきましょう。

野生下のニホントカゲの冬眠時期と場所

野生のニホントカゲは、秋が深まり気温が15℃を下回る頃から活動を控え、11月頃に冬眠へ入ります。春の訪れとともに気温が上がる3〜4月頃に再び姿を見せるのが一般的です。

冬眠場所として選ばれるのは、気温変化が少なく安全な場所。たとえば、落ち葉が積もった地面の下、石や木の根元、岩のすき間などです。地中10〜20cmほど潜ることで、外気の寒さや凍結を避けられます。

このように、ニホントカゲは自ら快適な環境を選び、寒さや外敵から身を守りながら静かに春を待っているのです。

冬眠中の体の状態と目的

冬眠中のニホントカゲは、体の働きを最小限に抑えてエネルギーを節約します。心拍や呼吸はゆっくりとなり、体温は周囲とほぼ同じまで下がります。そのため、外見はまるで眠っているように見えますが、実際は生命維持のための「省エネモード」のようなもの。

この間、餌も水も摂らず、秋までに蓄えた脂肪を少しずつ使って生き延びます。冬眠の目的は、寒さや餌不足の時期を安全にやり過ごすこと。

春に活動を再開したとき、繁殖や餌探しに十分な体力を残しておけるようにするための自然な仕組みです。

飼育下ではどうする?冬眠させるかどうかの判断

室内で飼っているニホントカゲを冬眠させるべきか悩む飼い主さんは多いでしょう。実は、飼育環境や個体の健康状態によって最適な方法は異なります。

冬眠は自然な行動ですが、飼育下ではリスクもあります。ここでは、冬眠させる場合とさせない場合の判断ポイントを紹介します。

冬眠させるメリットとリスク

冬眠を経験させることで、ニホントカゲの自然な生活リズムを再現できるというメリットがあります。

季節の変化を感じ取ることで体内リズムが整い、繁殖行動を促す効果も期待されます。また、活動を止めることで体力の消耗が減り、ストレス軽減にもつながるでしょう。

しかし、同時に大きなリスクもあります。健康状態が万全でない個体が冬眠に入ると、体力を使い果たして命を落とす危険性があります。また、温度や湿度の管理を誤ると、途中で目を覚ましてしまったり、脱水や栄養不足を起こすことも。

飼育下で冬眠させるには、自然環境の再現が必要です!

冬眠させない方が良いケース

初心者や小さな子どもが世話をしている場合は、無理に冬眠させない方が安全です。冬眠させない飼育(=通年で活動させる飼育)は、温度と明るさを適切に保つことで実現できます。

また、体調を崩している個体、痩せている個体、寄生虫の疑いがある個体などは冬眠させるのは避けましょう。その年に生まれた幼体や高齢個体は体力が少なく、冬眠に耐えられないことが多いからです。

飼育環境の温度を15〜25℃に保てるなら、冬眠させずに冬を越す方法が最もリスクが少ない選択です。繁殖を目的としない限り、冬眠は必ずしも必要ではありません。

冬眠させない場合の飼育方法

冬眠させない「通年飼育」は、初心者にもおすすめの方法です。安定した室内環境を整えれば、ニホントカゲは冬でも元気に過ごせます。

ここでは、冬場の温度管理と餌やりのポイントを解説します。環境を守れば、寒い季節でも安心して飼育を続けられます。

もっとも気をつかう?温度管理のコツ

冬眠させないためには、温度を一定に保つことが何より重要です。ニホントカゲが快適に過ごせるのは、日中25〜30℃・夜間20℃前後。

急激な温度変化は体調不良の原因になるため、ケージ内に「暖かい場所(ホットスポット)」と「少し涼しい場所(クールスポット)」を作り、自分で移動できるようにしましょう。

保温には、パネルヒーターやバスキングライトを併用します。夜間は光を出さないセラミックヒーターも便利です。これらはサーモスタットにつないで自動で温度を調整し、過熱を防ぎましょう。湿度は50〜70%を目安に保ち、乾燥する場合は霧吹きで軽く加湿します。

冬場も清潔な水入れを設置し、水分補給を忘れずに!

餌やりと活動量の変化

冬でも活動を続けるとはいえ、寒さで代謝がやや落ちるため、餌の量と頻度を少し減らします。夏に毎日与えていた場合でも、冬は2〜3日に1回ほどで十分。活き餌(コオロギ・ミルワームなど)を中心に、カルシウム剤をまぶして栄養バランスを保ちましょう。

また、食後はしっかりと体を温められる時間を作ることが大切です。体が冷えたままだと消化不良を起こすことがあります。活動量が減る時期は、動きが鈍い・食欲が落ちるなどのサインを見逃さず、必要に応じて餌を控えめに。

元気がない様子が続くときは、爬虫類を診られる動物病院に相談しましょう。

冬眠させる場合の環境づくり

自然に近い形で冬眠を体験させたい場合は、温度・湿度・安全性の3つを整えることが欠かせません。準備を怠ると命に関わることも。

ここでは「冬眠前の準備」「環境づくり」「冬眠中の観察」という3つのステップで、安全に冬を越すための方法を紹介します。

冬眠前の準備とタイミング

冬眠の準備は、秋の気温が下がり始める9〜10月頃からスタートします。まずは餌の量を減らし、冬眠の1〜2週間前には完全に給餌を止めましょう。腸内に餌が残ったまま冬眠すると、腐敗して命を落とす危険があるため、必ず最後の排泄を確認します。

同時に、健康チェックも重要です。痩せていたり、食欲がない個体は冬眠に耐えられません。元気でよく動く個体のみを対象にし、体力をしっかり蓄えさせてから冬眠環境へ移行しましょう。急激な温度変化は避け、ゆるやかに室温を下げていくのが理想です。

冬眠に適した環境の条件

安全に冬眠させるためには、温度・湿度・暗さを安定させることが基本です。理想の温度は5〜10℃前後で、0℃を下回ると凍結、15℃を超えると中途覚醒のリスクが高まります。

床材には湿らせた腐葉土やピートモス、ミズゴケを10cmほど敷き、軽く握って水が滴らない程度に湿らせておきましょう。乾燥すると脱水症状を起こしてしまうため、定期的に霧吹きで加湿します。

冬眠容器(冬眠ボックス)は、通気性があり、静かで暗い場所に設置。玄関や北向きの部屋など、温度変化の少ない環境が向いています。温度計を置いてこまめにチェックしましょう。

冬眠中の観察と注意点

冬眠中は刺激を与えないことが基本ですが、完全に放置するのも危険。月に1〜2回は静かに様子を確認し、床材が乾いていないかチェックしましょう。乾燥していたら、霧吹きで軽く湿らせる程度に保湿します。

また、異臭やカビが発生していないかも確認が必要です。もし体にカビが見られる、体が極端に痩せている、動かないのに硬直しているなどの異常があれば、冬眠を中止して暖かい環境に戻しましょう。

冬眠中の死亡リスクは決してゼロではありません。定期的な観察と温度・湿度管理を徹底することが、春に元気な姿で再会するためのポイントです。

春の目覚めと冬眠明けのケア

春の訪れとともに、冬眠していたニホントカゲが少しずつ活動を再開します。冬眠明けは体力が落ち、脱水や消化不良を起こしやすい時期。焦らずにペースを整えながら、少しずつ通常の環境に戻していきましょう。

ここでは、安全に目覚めさせるための基本を解説します。

冬眠明けのタイミングとサイン

自然界のニホントカゲは、外気温が15℃前後になると活動を始めます。飼育下でも、春の陽気が安定してきたら冬眠環境の温度をゆっくり上げていきましょう。

冬眠明けのサインには、体を動かし始める、地上に出て日光を浴びる、水を飲もうとするなどがあります。こうした行動が見られたら、室内のケージに戻して飼育を再開します。

すぐに餌を与えるのではなく、まずは新鮮な水を用意し、霧吹きで軽く湿らせて水分補給を促しましょう。脱水状態を防ぐことが、健康な目覚めの第一歩です。

起きた後に気をつけたいこと

冬眠直後のニホントカゲは体がまだ十分に動かず、急な温度変化や刺激に弱い状態です。まずはケージを25〜28℃に設定し、数日かけて通常の環境へ戻します。UVBライトを点灯し、骨や代謝の回復をサポートします。

最初の給餌は、活動が安定してから少量ずつ。消化の良いコオロギやミルワームを与え、様子を見ながら少しずつペースを戻しましょう。

体重や皮膚の状態を確認し、極端な痩せやぐったりした様子があれば早めに動物病院へ。春の数週間は、ニホントカゲが本調子を取り戻すための“慣らし期間”です。

ニホントカゲの冬越しは状況に合わせて判断を

ニホントカゲは、日本の冬を乗り越えるために冬眠する生き物です。野生では自然の流れに任せて冬眠しますが、飼育下では環境や個体の状態によって「冬眠させる」「冬眠させない」を選べます。

初心者や子どもと一緒に飼う場合は、無理に冬眠させず、室内で保温して過ごさせる方が安全です。反対に、自然に近い形で冬眠させたい場合は、温度・湿度・静けさの3点をしっかり管理し、定期的に状態を確認することが大切。

どちらの方法を選んでも、大切なのはニホントカゲが元気に春を迎えられること。季節ごとの体調変化をよく観察しながら、安心して冬を乗り越えられる環境を整えてあげましょう。

ゆかりーぬ

動物系ライター ゆかりーぬ レオパとニシアフの飼育を通じて、爬虫類の奥深さにどっぷりハマっています。初心者さんの「これって大丈夫?」に寄り添えるよう、リアルな飼育の工夫や気づきをシェアします。爬虫類との暮らしが、もっと身近で楽しくなるお手伝いができたら嬉しいです。

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