爬虫類の飼育を始めると、よく耳にする病気のひとつが「くる病」です。「うちの子は大丈夫かな…」「どんな症状が出るの?」と不安になる飼い主さんも多いかもしれません。
爬虫類のくる病は、骨が弱くなったり変形してしまう病気で、放置すると命に関わることも。しかし、正しい知識と日々の環境づくりさえ押さえておけば、ほとんどの場合は予防できます。
本記事では、くる病の原因や見逃してはいけない危険サイン、今日からできる予防法までをわかりやすく解説します。大切な爬虫類の健康を守るために、ぜひ基本を一緒に確認していきましょう。
爬虫類のくる病とは?基本の仕組み

爬虫類のくる病は、初心者が気をつけたい健康トラブルのひとつです。くる病は難しい病気に見えますが、正しい知識があればしっかり予防が可能。まずは「どんな病気なのか」「なぜ起こるのか」を解説します。
くる病はどんな病気?
くる病は、爬虫類の骨がうまく固まらず、柔らかくなってしまう病気です。代謝性骨疾患(MBD)の一種で、カルシウムをうまく利用できないことで起こります。
とくに成長期の幼体で発症しやすく、甲羅が柔らかくなる、手足が曲がる、歩きにくい、食欲が落ちるなど、生活に影響する症状が多くみられます。進行すると骨折しやすくなり、生活に大きな支障が出ることも。
放置すると命に関わる病気ですが、実は多くが飼育環境の改善で予防できるため、まずは「どんな病気か」を理解しておきましょう。
なぜ起こる?カルシウムやビタミの関係
くる病が起こる最大の理由は、「カルシウム」「ビタミンD3」「紫外線(UVB)」の不足やバランスの崩れです。
カルシウムは骨の材料ですが、ビタミンD3がないと腸で吸収できません。多くの爬虫類は、紫外線B波(UVB)を浴びてビタミンD3を作り出します。UVBライトの設置が不十分だと、カルシウムを摂っていてもうまく吸収できず骨が弱くなります。
また、エサとなる昆虫はリンが多く、カルシウムとのバランスが崩れやすい点も注意が必要。こうした小さな積み重ねが、くる病につながってしまうのです。
こんな症状は危険サイン!くる病の初期〜重度症状

くる病は初期症状がとてもわかりにくく、気づいたときには進行していることも。飼い主が早い段階で異変に気づけるかどうかが、その後の回復に大きく影響します。判断しやすい初期のサインから、進行した症状までを詳しく見ていきましょう。
食欲低下や動きの鈍さは初期のサイン
くる病の初期症状はとても控えめで、ほかの体調不良とも似ているため見逃しがちです。まずよく見られるのが食欲低下。普段より餌を食べる量が減ったり、食べる速度が遅くなったりします。
また「動きが鈍くなる」「隠れている時間が長い」など、活動量の変化も重要なサインです。手足に力が入りにくくなるため、歩き方がぎこちなくなることもあります。
カメの場合は、甲羅がわずかに柔らかく感じられることもありますが、初期段階では気づきにくいことがほとんどでしょう。
骨の変形や甲羅の軟化はすでに進行中
くる病が進行すると、より明確で深刻な症状が現れます。代表的なのが骨格の変形です。カメの場合は、甲羅が平らになったり、縁がめくれたりといびつな形になりやすく、重度では指で押すと凹むほど柔らかくなることもあります。
トカゲやヘビには、顎の変形が起こり、うまく口を閉じられずエサを捕まえにくくなります。手足も曲がったり腫れたりし、歩行困難になるケースも少なくありません。また、骨が弱いため軽い衝撃でも骨折しやすくなります。
さらに、震えや痙攣が起こることもあり、重度では自力で動けなくなることも。ここまで進むと生活に大きな支障が出るため、早期対処が非常に重要です。
自己判断しないで!くる病と似た症状
くる病の症状には、ほかの病気でも見られるものが多く、飼い主が自己判断するのはとても危険です。食欲不振や活動量の低下は、脱水や寄生虫、細菌感染など多くのトラブルで起こります。
また、手足の麻痺や歩行異常は、神経系の異常や腎臓病による骨代謝トラブルでも見られることがあります。甲羅が柔らかい場合でも、成長による一時的な変化と区別がつかないこともあります。
「これはくる病だ」と思い込むと、誤ったケアをして悪化させてしまう危険性も。症状が複数当てはまる場合は、必ず専門の獣医に相談することが大切です。正しい診断を受けることで、適切な治療につながり、回復の可能性も高まります。
爬虫類のくる病を予防する方法

くる病は、一度進行するともとの状態に戻すのが難しい病気ですが、日々の飼育環境を整えることで高い確率で予防できます。今日から実践できる予防の基本をわかりやすく説明します。
エサやサプリメントでできる予防
エサの選び方は、くる病予防のなかでもとくに重要です。昆虫食の爬虫類のエサに多いコオロギやミルワームは、リンが多くカルシウムが少ないため、そのままでは栄養バランスが崩れてしまいます。
理想的な栄養バランスを保つために、カルシウムパウダーをまぶす「ダスティング」が欠かせません。エサを与える前にパウダーをまぶすだけで、手軽にカルシウム補給ができます。また、成長期や産卵期の個体には、よりこまめな補給が必要です。
総合ビタミン剤やビタミンD3サプリを併用する場合は、過剰摂取に注意し、使用頻度や量は必ず製品の指示や獣医の助言に従いましょう。日々の小さな積み重ねが、大きな予防につながります。
紫外線(UVB)ライトの設定
紫外線B波(UVB)は、爬虫類が体内でビタミンD3を作るために欠かせない光です。ビタミンD3が不足するとカルシウムを吸収できないため、UVBライトはくる病予防の重要な設備。
ライトは種類によって照射範囲や強さが異なるため、飼育している爬虫類に合った出力を選びましょう。砂漠性の種にはUVB10.0、森林性の種にはUVB5.0が目安です。また、ライトと日光浴スポットの距離が適切でないと、十分なUVBが届きません。
ガラスやアクリルはUVBを通さないため、直接照射できる場所に設置しましょう。UVBライトは見た目の明るさが変わらなくても、半年〜1年で紫外線量が落ちるため、定期的な交換が必要です。
くる病かも?と思ったときの対処ステップ

「もしかしてくる病では…?」と感じたら、まずは落ち着いて状況を確認することが大切。早めに対応すれば回復の可能性が高まり、悪化を防ぐことにもつながります。家でできるチェックポイントと、動物病院での診察について分かりやすく説明します。
家でまず確認するポイント
くる病の疑いがあるときは、最初に「症状」と「飼育環境」の両方を整理します。まずは、食欲の有無、動きの弱さ、手足の震え、甲羅や顎の柔らかさなど、気づいたサインを具体的にメモしておきましょう。
写真や動画を残しておくと、後で獣医に説明するときに役立ちます。次に、与えているエサの種類やカルシウム補給の頻度、サプリメントの量、UVBライトの種類や設置距離、交換時期、ケージ内温度などをチェックします。
くる病の診断に必要な情報をできるだけ正確に整理しておきましょう。
専門の獣医による診断と治療
くる病の可能性がある場合は、必ず爬虫類を診られる獣医へ相談することが必要です。一般的な犬猫の病院では、爬虫類の設備や知識が十分でないこともあります。
受診時には、事前に整理しておいた情報をできるだけ詳しく伝えましょう。獣医は触診・視診に加え、レントゲン検査で骨の様子を確認し、必要に応じて血液検査でカルシウムやリンの値を調べてくれます。
診断結果に応じて、カルシウム製剤やビタミンD3の投与など、適切な治療が行われます。くる病は一度進行すると完全にもとに戻らないことも多いため、指示された治療を継続することが重要です。
爬虫類のくる病は予防がいちばん大切

くる病は、爬虫類の健康に大きく影響する深刻な病気ですが、毎日の飼育環境を整えることで多くの場合は予防できます。カルシウム・ビタミンD3・UVBの3つをバランスよく満たすことが重要です。
また、わずかな変化に早く気づけるかどうかも重症化を防ぐ最大のポイントになります。もしも、くる病が疑われたときは、自己判断せず、必ず専門の獣医に相談しましょう。正しい知識と日々のケアが、爬虫類の健康につながります。
大切なのは、気づいたことを少しずつ見直しながら、生体にとって安心できる環境を整えてあげること。困った時はひとりで抱え込まず、専門家の力も頼りながら、健康的に暮らせる状態を一緒に目指していきましょう。

