「ケージにコバエがわいてしまった」「虫除けスプレーって使っていいの?」そんな悩みを抱える爬虫類・両生類の飼い主さんは少なくありません。
とくに、爬虫類や両生類は高温多湿な環境を好む種類が多く、虫が発生しやすい条件が揃っています。
でも、市販の殺虫剤や蚊取り線香を使ってしまうと、ペットの体に悪影響を与えてしまう危険性があることをご存じでしょうか?
この記事では、虫の発生原因から、具体的な予防法、安全な虫除けグッズまで、初心者にもわかりやすく紹介します。
爬虫類・両生類に安全な虫除け対策とは?

虫がわくとすぐにでも使いたくなるのが、殺虫スプレーや蚊取り線香といった市販の虫除けアイテム。ですが、爬虫類や両生類にとっては、それが命取りになることもあります。
彼らは、人間よりもはるかに繊細な呼吸器や皮膚構造を持っています。両生類は皮膚から水分や空気を取り入れ、爬虫類も体表が非常に敏感です。
そのため、空気中にただよった化学成分やアロマオイルの揮発成分ですら、中毒や呼吸障害を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
市販の殺虫剤や芳香剤は使ってはいけない
以下のような製品は、たとえケージの中で直接使用しなくても、家の中での使用自体がリスクになります。
使用NGの製品例 | 理由・リスク |
殺虫スプレー (蚊・ゴキブリ用) | 神経毒性が強く、微量でも呼吸器や神経にダメージを与える恐れがある |
蚊取り線香・電気蚊取り器 | 空気中に有害成分が拡散。ケージの隙間から入り込むリスクあり |
アロマディフューザー | ハッカ油やシトロネラなど「天然成分」も刺激が強く、両生類の皮膚から吸収されやすい |
芳香スプレー・消臭剤 | 揮発性化学物質(VOC)による呼吸器刺激やアレルギー反応の可能性 |
人体用虫除けスプレー | DEET(ディート)やイカリジンが含まれるものは、爬虫類・両生類には有害 |
「人には安全」なものでも、爬虫類・両生類にとってはほんのわずかな量でさえ致命的になることがあるのです。
ペットがいてもOKという表記があっても、犬や猫が対象で爬虫類や両生類には有害な場合もあります。
香り・煙・スプレーは使わないのが基本
虫を避けるつもりで使った対策が、ペットにストレスや健康被害を与える結果になってしまっては本末転倒です。
殺虫剤に限らず、香りの強い製品や揮発成分を含む製品は、ケージの近くでは一切使わないようにしましょう。
とくに、小さなお子さんや同居家族がいる家庭では、「知らずに使ってしまった」「別室で焚いたアロマの香りが移動してきた」といったケースもあるため、家族全体で安全意識を共有しておくことも大切です。
虫を寄せつけない飼育環境のつくり方

殺虫剤を使わずに、どうやって虫を防げばいいのか不安に思う方も多いかもしれません。でも安心してください。虫の発生は、毎日のちょっとした管理と環境づくりで十分に予防できます。
ここでは、初心者でもすぐに実践できる、安全な虫除け対策の基本をご紹介します。
ケージを清潔に保つ
虫を寄せつけないための第一歩は、飼育環境を清潔に保つことです。 排泄物やエサの残り、湿った床材は、コバエやダニなどの温床になりやすく、放置すると一気に増殖してしまうこともあります。
床材は種類によって虫の発生リスクや交換頻度が異なります。以下のように選ぶと安心です。
床材の種類 | 虫への強さ | 清掃のしやすさ | 交換の目安 |
ペットシーツ系 | ◎(虫が湧きにくい) | ◎(扱いやすい) | 汚れたらすぐ交換 |
キッチンペーパー | ◎ | ◎ | 毎日〜数日ごと |
ヤシガラ・ソイル系 | △(湿度調整は必要) | △(湿りやすい) | 部分交換:数日ごと 全体:月1〜2回 |
バーミキュライト | ○(通気性◎) | ○ | 定期的な交換が必要 |
「自然な見た目」を求めるか「清掃しやすさ」を優先するかは飼い主さん次第ですが、初心者の方にはペットシーツや紙系の床材がおすすめです。
エサの管理にもひと工夫

実は虫の発生原因として多いのが「エサの管理ミス」です。 特に生餌(コオロギ・ミルワーム・デュビアなど)は、食べ残しや死骸が虫の呼び水になります。
虫を寄せつけないためには、下記の工夫が大切です。
- 餌はピンセットや給餌皿を使って与える
- 給餌後は30分〜1時間以内に食べ残しを回収
- 生餌の保管ケースもこまめに掃除して、コバエやダニの発生を防ぐ
また、購入する生餌の容器にコバエがついていないか、衛生的に管理されているかも確認しておくと安心です。
生餌そのものが虫の侵入口になってしまうこともあるため、購入時にも注意が必要です。
飼育部屋の環境にも気を配る
いくらケージを清潔にしていても、部屋の環境が虫にとって快適なら、あっという間に侵入されてしまいます。
たとえば、下記のようなケースは、爬虫類・両生類を飼っていなくても起きる「あるある」ですよね。
- 観葉植物の土にコバエが発生していた
- 台所の生ゴミから虫がわいて、飼育部屋まで侵入してきた
- 網戸に穴が空いていた
「虫が出てから対処する」のではなく、部屋全体で虫が住みにくい空間をつくることが重要です。
ケージの構造や置き場所にも注意
ケージ自体にも、虫の侵入を防ぐ工夫が必要です。
- 通気口やフタに目の細かい防虫ネットを貼る
- 壁際にぴったりつけず、少し空間を空けて通気性を確保
- ケージは床に直置きせず、ラックやスタンドの上に設置
- 湿気がこもりやすい場所(浴室・キッチン・窓際)を避ける
こうした設置の工夫だけでも、湿度のこもりや虫の侵入を減らせます。毎日のちょっとした意識と工夫が、爬虫類・両生類の健康を守る虫除け対策につながります。
虫が出てしまったら?ペットに優しい対処法を知っておこう

どれだけ清潔に気をつけていても、虫の発生を完全にゼロにするのは難しいもの。とくに夏場や湿度が高い季節は、コバエやダニなどが突然わいてしまうこともあります。
そんなときは、慌てて殺虫剤を使ってしまわず、安全な方法で落ち着いて対処しましょう。
家の中でも殺虫剤はNG!見えないリスクに注意
「ケージの中で使わなければ大丈夫」と思われがちですが、実は家の中で使った殺虫スプレーや芳香剤も、ペットに悪影響を与えることがあります。
市販の殺虫スプレーや蚊取り線香、電気式の虫除けには、ピレスロイド系や有機リン系などの神経毒性成分が含まれており、空気中に拡散した成分がケージの隙間から入り込む可能性があります。
揮発性の成分は空気を通ってケージ内に入り込み、呼吸器や皮膚から吸収されてしまうリスクも。とくに両生類は皮膚呼吸をしているため、微量でも体に大きな負担をかけることがあります。
また、殺虫剤だけでなく「天然成分」とされるアロマスプレーやハッカ油スプレーなども要注意。安心そうに見えて、実は刺激が強すぎることがあるため、使わないようにしましょう。
家の中全体で「虫除け成分を持ち込まない」意識を持つことが、ペットを守る一番の予防になります。
薬剤に頼らず、物理的な方法で駆除しよう
虫が数匹程度であれば、薬剤を使わずに駆除する方法がいくつもあります。ケージ内で見つけた虫は、ピンセットや割り箸でつまんで処分するのが確実です。
また、小さな虫や卵はハンディ掃除機などで吸い取るのも有効ですが、ペットを吸い込まないよう十分に注意してください。
市販の粘着トラップや、ペットボトルを使ったコバエ捕獲器なども有効ですが、設置は必ずケージの外にしましょう。
粘着シートは、ペットの体にくっつくと命に関わる事故につながることがあります。
ケージを一度リセットするのもひとつの手
虫の数が多い、繰り返し発生する、発生源が見つからない――。そんなときは、ケージ全体をいったんリセット・清掃するのがおすすめです。
安全なリセット手順
- ペットを別容器に一時避難
- レイアウトや床材をすべて取り出す
- 熱湯・ペット用消毒スプレーでケージと備品を徹底洗浄
- 十分に乾燥させたうえで再セットアップ
とくに湿った床材や隙間に卵が潜んでいることもあるため、徹底的に洗ってから再設置することが大切です。
まとめ|殺虫剤に頼らず、安心できる飼育環境を目指そう

爬虫類・両生類の飼育や季節によっては、虫の発生は避けられない悩みのひとつ。ですが「虫が出たら殺虫スプレーを使う」という考え方は、繊細なペットたちにとってはとても危険な選択になってしまいます。
この記事で紹介したように、爬虫類・両生類は皮膚や呼吸器が非常にデリケートです。空気中にわずかに残った殺虫成分でも、体調不良や中毒を引き起こすリスクがあるため、ケージの中はもちろん、家の中でも虫除け薬剤の使用は避けるべきでしょう。
毎日の掃除や餌の管理を丁寧に行い、虫がわきにくい環境をつくり正しい知識をつけることで、万が一虫が出ても薬剤に頼らず安全な方法で落ち着いて対処が可能です。
虫が発生しても慌てず、まずは原因を見直し、ペットに負担の少ない方法を選ぶことが何より大切です。そしてもし、少しでも体調に異変を感じたら、迷わずエキゾチックアニマルを診てくれる獣医師に相談しましょう。
爬虫類・両生類と安心して暮らせる環境づくりのヒントとして、この記事で紹介した対策を参考に、ぜひペットと安心して暮らせる環境づくりに取り組んでみてください。