クサガメ(学名:Mauremys reevesii)は、昔から日本の田んぼや池、用水路などでよく見かけた親しみのある淡水カメです。
しかし、その一方で、意外な特徴や行動を持っていることをご存知でしょうか?その名の通り“臭い”で有名なクサガメですが、実は見た目や性格、行動、生態系への適応能力など、知れば知るほど奥が深い生き物なのです。
この記事では、クサガメの基本的な特徴から、飼育のコツ、飼ってみて驚いた面白い習性まで徹底解説します。

クサガメって?
クサガメはイシガメ科イシガメ属に属する淡水カメで、日本・中国・台湾など東アジアに広く分布しています。
日本では長年、在来種として親しまれてきましたが、近年では中国大陸原産説が有力視されており、実質的には「古くから定着した外来種」と位置づけられることも増えています。
日本でよく見られる、リーブスクサガメ(学名:Mauremys reevesii)は、おとなしく人に慣れやすい性格を持つカメで、雑食性です。小魚や昆虫、水草などを好んで食べます。
全長はオスでおよそ12〜15cm、メスは最大で20cm以上に成長することもあります。寿命は飼育環境によって異なりますが、一般的に20〜30年といわれており、適切なケアを行えば非常に長生きするカメです。
クサガメは、特にメスのほうが大きく成長する傾向があります。成体の見た目で性別判定がしやすい点も飼育者にとっては大きなメリットです。
見た目の特徴
クサガメ最大の外見的特徴は、甲羅に入る3本の筋(キール)。これにより、他種と一目で見分けやすくなっています。さらに成長段階によって体色が劇的に変化するのも魅力です。
- 幼体:黒っぽい甲羅に黄色い線がはっきり
- 成体オス:全身が黒くなる「黒化」(メラニズム)と呼ばれています。
- 成体メス:赤褐色~茶色の明るい体色が残る傾向
- 頬:黄色い線状の模様(幼体・メスに多い)
甲羅や顔に見られる細かい線模様は個体差があり、飼育していると名前をつけたくなるほど“顔立ち”に個性が出ます。
クサガメの性別判定は成長すると簡単になります。オスは真っ黒に、メスは明るい色合いと大きな体が特徴です。性格の違いも見えてくるので、観察が楽しくなりますよ!
クサガメの“臭い”は防衛の証
名前の由来にもなっている“臭い”は、危険を感じたときに肛門腺(総排泄孔)から発されるもので、非常に強烈です。実際に野外で捕まえると、服や手に付着しやすく、なかなか取れません。
ただし、この臭いは飼育下で慣れてくると出さなくなることがほとんど。つまり、信頼関係が築ける生き物なのです。
野生のクサガメは臭いでストレスを訴えます。捕獲したらすぐに静かに戻すか、丁寧に扱ってあげましょう。飼育下では臭わなくなるので、過度な心配は不要です。
クサガメの生態と行動
クサガメは流れのある淡水域に生息し、水中でも陸上でも活動的です。晴れた日には甲羅干しのために石の上に乗り、じっと日光を浴びます。この行動には体温調節と、皮膚病予防という重要な役割があります。
また、夜間は静かに水中に潜って休む習性があり、日中とは異なる一面を見せてくれます。冬には冬眠し、水底の泥や落ち葉の下でじっと春を待ちます。
珍しい行動エピソード
ある飼育者は、クサガメが水槽の中で“石を持ち上げて遊ぶ”ような行動をすることに気づきました。これは運動不足の解消や好奇心による行動とされ、知能の高さを感じさせる一面です。
雑食だけど偏食注意
クサガメは非常に幅広いものを食べます。野生では、魚、エビ、昆虫、落ちた果実、水草、さらには他のカメの卵まで食べるほど。
飼育下でも人工飼料のほか、レタスやミミズ、煮干しなどを好みます。ただし、栄養の偏りや食べすぎには要注意です。特に動物性たんぱく質が多すぎると、腎臓への負担や甲羅の変形が起きやすくなります。
クサガメには人工飼料をベースに、時々レバーや小魚、野菜をミックスして与えましょう。週に1回は“絶食日”を設けると、健康維持につながります。

繁殖と成長
クサガメは卵生で、繁殖期(初夏)にはオスが前肢を使ってメスの顔をこするような求愛ダンスをします。このしぐさは見ていて非常に愛らしく、飼育下でも観察可能です。
メスは1回につき1~12個の卵を、年に複数回産み、70日前後で孵化します。孵化には正確な湿度と温度管理が必要なため、繁殖は上級者向けですが、自然に任せる形でも意外と成功することがあります。
クサガメの意外な行動パターンとは?
クサガメは「じっとして動かないイメージ」があるかもしれませんが、実は意外と活発な一面もあります。たとえば、好奇心旺盛な個体は飼い主の動きを目で追ったり、餌の時間になると手を使ってアピールしてくることも。
また、照明のスイッチ音を覚えて、明かりがつくと水面に近づく個体もいます。飼い込むほどに個体ごとの性格が出てくるのもクサガメの魅力の一つです。
クサガメは長生きするって本当?
クサガメは適切な環境下で飼育すれば20〜30年、時には40年近く生きることもある長寿のカメです。長寿の秘訣は、日光浴・水質管理・バランスの良い食事という基本的な3つのポイントに加え、ストレスを与えない環境づくりにもあります。
また、冬眠を自然に行わせることで生体のサイクルが整い、健康寿命を延ばす効果もあるとされています。長く一緒に暮らすパートナーとして、しっかり向き合っていく価値のある生き物です。
クサガメの冬眠のしくみと注意点
クサガメは日本の気候に順応して冬眠を行うカメでもあります。自然下では、11月頃から3月頃まで水底の泥や落ち葉の下などで冬眠し、活動を一時停止します。
飼育下でも冬眠させることは可能ですが、冬眠にはリスクも伴います。健康状態が万全でない個体は冬眠中に体力を消耗し、命を落とすことも。
冬眠させる場合は、事前にしっかりと栄養を取らせ、水温や湿度の管理を徹底する必要があります。
一方で、加温飼育で冬眠させずに通年活動させることも可能です。どちらの方法を選ぶかは、飼育環境や個体の状態に応じて判断しましょう。
冬眠は自然なサイクルの一部ですが、飼育下では慎重な準備が必要です。不安がある場合は加温飼育で冬眠を避ける選択も◎。
クサガメ飼育のポイント
- 日光浴スペースは必須。紫外線ライト or 屋外で健康な甲羅をキープ
- 水換えは週に2〜3回。ろ過器があると安心
- 冬眠をさせるかどうかは体調を見て判断(初心者は無理にさせない方が安全)
- 水槽内に隠れ家を用意してストレスを軽減
オスは成長とともに爪が長くなり、メスよりも小柄な傾向があります。個体識別の参考にしてください。
まとめ
クサガメは、甲羅の筋や色の変化、臭いの防衛本能、面白い行動パターンなど、他の淡水カメにはない魅力をたくさん持っています。性格もおとなしく、飼育もしやすいため初心者にもおすすめできる爬虫類です。
外見の美しさ、観察の楽しさ、飼い主との信頼関係など、クサガメはまさに“奥深き身近なカメ”。もし飼い始めたら、その愛らしさにどっぷりハマってしまうことでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました☺