日本の水辺でよく見かけるカメといえば、ニホンイシガメ(Mauremys japonica)やクサガメ(Mauremys reevesii)が代表的です。
どちらも身近なカメですが、いざ見つけてみると「これはどっちだろう?」と迷ってしまうこともありますよね。
特に子どもの頃や、雑種のウンキュウがいるような場所では、見分けがより難しく感じることもあります。
この記事では、イシガメとクサガメの違いをわかりやすく解説しています。見た目の特徴だけでなく、行動の違いやにおい、雑種との見分け方のポイントもご紹介します。
カメが好きな方はもちろん、自然観察が好きな方や、これからカメの飼育を始めたいと思っている方にも、きっと役立つ内容になっています。

出典:wikipedia
イシガメとクサガメの分類と分布
まずは、イシガメとクサガメの基本的な違いと分布について見てみましょう。ニホンイシガメは日本にもともと生息している在来種で、本州・四国・九州、そして一部の離島に広く分布しています。
一方、クサガメはもともと中国にいたカメで、昔から日本に持ち込まれて定着した外来種のような存在です。
どちらのカメも淡水を好み、池や川、用水路などでよく見かけます。ただ最近では、クサガメやクサガメとイシガメの雑種が増えてきており、ニホンイシガメの数は少なくなってきているのが現状です。
行動や性格の違い
イシガメとクサガメは、行動や性格にも少し違いがあります。イシガメは、どちらかというとちょっと臆病で慎重な性格をしていて、日なたで甲羅干しをしたり、水の中で静かに過ごしていることが多いです。
一方、クサガメは人に慣れやすく、飼育していると元気に動き回る姿がよく見られます。こうした性格の違いを観察してみるのも、カメとふれあう楽しさのひとつです。
甲羅の形状とキール(隆条)の違い
イシガメとクサガメを見分けるとき、いちばんのポイントになるのが「甲羅の形」と「キール(背中にある筋)」の違いです。
イシガメ
イシガメの甲羅は、真ん中に一本だけキールと呼ばれる筋があり、甲羅の後ろの部分がギザギザとのこぎりのような形をしています。
色は黄土色や明るめの茶色が多く、全体的にやわらかい色合いです。キールは成長すると少し目立たなくなることもありますが、基本的には1本だけです。
クサガメ
クサガメの甲羅には、真ん中の筋に加えてその両側にも筋があり、全部で3本のキールがあります。甲羅の後ろは丸くなっていて、色は黒っぽい茶色から赤みがかった茶色まで、個体によってさまざまです。
子どもの頃は黄色い線がくっきり見えることが多いですが、成長するとオスは体全体が黒っぽくなる黒化(メラニズム)と呼ばれる姿に変わることがあります。
甲羅の筋の本数を数えるのが、もっとも確実な見分け方です。一本ならイシガメ、三本ならクサガメ。迷ったときはまずここをチェックしましょう。
頭部・首・四肢の模様の違い
イシガメとクサガメは、頭や首、手足の模様にも違いがあります。
イシガメ
イシガメは、首にほとんど模様がなく、四肢にはオレンジ色のすじ模様が入っているのが特徴です。顔まわりには模様があまり見られず、顔立ちは少しシャープな印象です。特に手足にあるオレンジの模様は、ほかのカメと見分けるときの大きなヒントになります。
クサガメ
一方クサガメは、子どもやメスには首やほおに黄色い線のような模様があり、頭がやや大きめなのが特徴です。
オスは成長すると模様がだんだん消えて、体全体が黒っぽくなることもあります。クサガメの手足には、イシガメのようなはっきりしたオレンジ模様は見られません。
イシガメの四肢にオレンジ色の線があるかどうかも、現場での大きな手がかり。写真を撮って後から拡大してみるのもおすすめです。
臭いで見分ける!クサガメ最大の特徴
クサガメの名前の由来は「臭いカメ」。危険を感じると、肛門腺から非常に強い臭いを発します。イシガメはこのような臭いを出しません。
捕獲したときに鼻を曲げるほど臭ければ、ほぼ間違いなくクサガメです。飼育下ではこの臭いはほとんど出なくなります。
捕獲時に強烈な臭いがしたら、それはクサガメ。臭いがしなければイシガメかもしれません。ただし、ストレスを与えすぎないよう注意しましょう。
腹甲の色と模様
お腹側の甲羅(腹甲)の色や模様にも、イシガメとクサガメには違いがあります。イシガメのお腹の甲羅は、ほとんどが真っ黒で、模様はほとんど見られません。とてもシンプルな見た目をしています。
それに対してクサガメのお腹の甲羅には、白っぽい線や模様が入っている個体が多く見られます。中には、カスタードクリームのようなやさしい色をした個体もいて、色合いに少し個性があります。
雑種(ウンキュウ)の存在と見分けの難しさ
イシガメとクサガメは、自然の中で交ざって子どもを作ることがあり、その雑種は「ウンキュウ」と呼ばれています。
ウンキュウは両方の特徴を少しずつ持っていて、たとえば甲羅の筋の数や体の色、模様などがイシガメとクサガメの中間のような見た目になることが多いです。
そのため、見た目だけでどちらかを判断するのがとても難しいこともあります。ウンキュウかどうかを見分けるには、臭いを出すかどうか、手足の模様、甲羅の形など、いくつかのポイントをよく観察して、総合的に判断することが大切です。
イシガメとクサガメの鳴き声・音の違い
カメは「鳴かない」と思われがちですが、実はイシガメやクサガメも、ときどき小さな音を出すことがあります。飼っていると、そんな意外な一面に気づくことがあるかもしれません。
たとえばクサガメは、びっくりしたときや水の中から陸に上がるときに、「キュー」や「ヒュッ」といったかわいらしい音を出すことがあります。
また、オスのクサガメは、交尾のときに甲羅をコツコツと鳴らすような音を出すこともあります。イシガメはクサガメよりもおとなしく、普段はあまり音を立てませんが、まれにストレスを感じたときなどに「ピーピー」と鼻で鳴くような音を出すことがあるそうです。
これらの音はとても小さいので、よく耳を澄まさないと聞こえないかもしれません。でも、そうした「音」にも目を向けてみると、カメとの暮らしがもっと楽しくなりますよ。

出典:Wikipedia
実際に飼ってわかった“あるある行動”
実際にイシガメやクサガメをおうちで育ててみると、本や図鑑ではわからない、ちょっとした「あるある」な行動に気づくことがあります。
1.クサガメのオスはとっても元気!
飼い主の足音や冷蔵庫の音に反応してバタバタ動き出すことがあります。中には、前足をパタパタさせて「ごはんちょうだい!」とアピールするようになる子もいます。これがとてもかわいいんです。
2.イシガメは少し慎重な性格。
最初のうちは水の中にこもって出てこないこともありますが、時間がたって慣れてくると、そっと近寄ってきたりして「おだやかだけど人なつっこい一面」を見せてくれます。
3.クサガメの方が「脱走名人」
ケースのフタがちゃんと閉まっていないと、ひょいっと登って逃げ出してしまうことも。一方、イシガメはそこまで活発ではないので脱走の心配は少なめですが、じわじわと行動範囲を広げていくような、静かな探検家タイプ。どちらも油断はできません。
もちろん、性格には個体差がありますが、実際に一緒に過ごしてみると、それぞれの個性にどんどん愛着がわいてくるはずです。
実際にイシガメやクサガメを飼育してみると、図鑑には載っていない意外な行動や性格の違いが見えてきます。
今後の識別や保全への意識も大切に
これから先、カメの見分け方を知ることや、自然の中のカメを大切にする気持ちもとても大切です。最近では、もともと日本にいたニホンイシガメの数が、外から来たクサガメの増加によって少なくなってきていることが心配されています。
イシガメとクサガメが混ざって生まれる雑種(ウンキュウ)が増えると、純粋なイシガメがいなくなってしまうかもしれない…そんな声もあります。
もし自然の中でカメを見つけたり、保護活動に参加するチャンスがあったら、「どんなカメかをよく見て知ること」が、イシガメを守る第一歩になります。
普段見かけるカメにも目を向けて観察してみると、日本の自然や生き物を守ることにつながっていきます。身近なところから、できることを大切にしていきたいですね。
まとめ
イシガメとクサガメを見分けるときは、甲羅のキール(とがった部分)の数や、頭や足の模様、におい、腹の色、甲羅の後ろの形など、いくつかのポイントを合わせて見るとわかりやすいです。
また、鳴き声や性格の違いにも注目すると、もっとはっきり見分けられますよ。ただ、イシガメとクサガメの間で生まれた雑種もいるため、100%確実に見分けるのは難しいこともあります。
それでも、よく観察すればだんだん見分ける力は上がっていきます。自然の中やおうちで飼うときは、カメたちに無理をさせずに、個性を楽しみながら見分けてみてくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました☺