大企業(従業員1万人以上)の社内新規事業プログラムのメンタリングをしていると、正直「アイデアが浅いな」と感じることがあります。
例えば、ある回では「地域イベントの活性化」や「工場内での作業効率化ツール」といった事業アイデアが出ました。どちらも一見もっともらしいのですが、実は事業アイデアとしては非常に抽象度が高くて、掘り下げが弱い。
「なぜ今その課題が解決されていないのか?」
「既存の手段ではダメなのか?」
「誰が何に困っているのか?」
「誰のためのアイデア(誰を喜ばせるアイデア)なのか?」
「顧客は本当にそこにお金を払うのか?」
こうした根本の問いに踏み込むことができていないのです。
大企業とスタートアップの真逆の構図
この「浅さ」は、参加者の能力不足ではありません。むしろ構造的な必然ではないかと考えています。
- 大企業:専門性を深掘りし、正確に遂行することが評価される文化。
- スタートアップ:まだ答えがない領域を探索的に深掘りし、仮説を検証する文化。
大企業でキャリアを積んできた人ほど「正しい答えを持ってくる」ことには慣れていますが、
「問いを立て、あえて曖昧さに向き合う」経験は乏しいのです。
イシューを見抜く力
むしろ、社内新規事業プログラムに本当の価値があるのは、「問いを立てる練習」ができることだと考えています。
- イシューとは何か?
イシューとは「答えを出すに値する問い」のこと。
表面的な課題ではなく、本当に取り組むべき論点を見抜く力です。 - 問いを磨く練習
「なぜ既存のやり方では不十分なのか」
「顧客は何に本当に困っているのか」
「なぜ今なのか」
こうした問いを重ねることで、アイデアは初めて事業の可能性を帯びてきます。
アインシュタインは「問題を作り出したのと同じレベルの思考では、その問題を解決することはできない」と語っています。
社内新規事業プログラムで大切なのも、まさにこの点です。表層的な課題意識のレベルではなく、一段深い「イシュー」を立てる力こそが、新しい解を導く前提になるのです。
まとめ
社内新規事業のアイデアが、新規事業担当者やメンターから見て浅いのは仕方のないことです。
それは社員のせいではなく、文化や評価軸の違いから生まれる構造的な問題だと思います。
大切なのは、その浅さを嘆くことではありません。
「問いを立てる練習そのものに意味がある」と捉えることです。
社内新規事業プログラムは、新規事業の成否を競う場であると同時に、
組織に「問いを磨く文化」を芽生えさせる場でもあると思います。